全射・単射・全単射

投稿者: | 2024年6月7日

全射

定義1 全射

写像\(f: X\rightarrow Y\)において、すべての\(y \in Y\)に対応する\(x \in X\)が存在する場合の\(f\)を全射である(surjective)、または(\(Y\)の)上への写像である(onto)という。

補足

・定義の条件は以下のように表すことができます。

     \[ $$f:X\twoheadrightarrow Y\\ \\$$ $$ $f:X \xrightarrow{\scriptsize onto} Y$ $$ \]

・次は全射の例です。\(Y\)のすべての要素に\(X\)が対応しています。\(1\)つの\(Y\)の要素に複数の\(X\)の要素が対応している場合も全射です。

・次の例は全射ではありません。\(Y\)の要素の中に、\(X\)との対応がないものがあります。

単射

定義2 単射

写像\(f: X\rightarrow Y\)において、すべての\(x_1,x_2 \in X\)に対し、
$$x_1 \neq x_2 \Rightarrow f(x_1) \neq f(x_2)$$ である場合の\(f\)を単射である(injective)、または\(1\)対\(1\)である(one-to-one)という。

補足

・単射の条件は次の条件と同値です。

すべての\(x_1,x_2 \in X\)に対し、
$$f(x_1)=f(x_2) \Rightarrow x1 = x2$$

f(x1)=f(x2) ⇒ x1 = x2が同値であることの確認
\(p\Rightarrow q\)という命題があった場合、その対偶\(\neg q \Rightarrow \neg p\)は必ず成り立ちます(\(\neg\)は否定の意味です)。
定義の、
$$x_1 \neq x_2 \Rightarrow f(x_1) \neq f(x_2)$$
の対偶は、
$$f(x_1)=f(x_2) \Rightarrow x_1 = x_2$$
なので、後者を単射の定義とすることもできます。

図でも考えてみましょう。
定義の\(x_1 \neq x_2 \Rightarrow f(x_1) \neq f(x_2)\)によって、次の図のように、異なる\(X\)の要素は異なる\(Y\)の要素に対応します。

つまり、複数の\(X\)の要素が同じ\(Y\)の要素に対応しないということでもあります。

これを単射と定義しました。

\(f(x_1)=f(x_2) \Rightarrow x_1 = x_2\)の場合、値が同じである複数の\(Y\)の要素は同じ\(X\)の要素に対応します。

やはりこれも、複数の\(X\)の要素が同じ\(Y\)の要素に対応しないということでもあります。

したがって、対偶も単射であるといえます。

・以下のように表す場合もあります。

     \[ $$f:X\rightarrowtail Y\\ \\$$ $$ $f:X \xrightarrow{\scriptsize 1-1} Y$ $$ \]

・下の図は単射の場合です。\(X\)の全ての要素が重複せずに\(Y\)の要素に対応しています。

・次は単射ではない場合です。\(Y\)への対応が重複している\(X\)の要素があります。

全単射

定義3 全単射

写像が全射かつ単射であるとき、これを全単射である(bijective)という。

補足

下の図は全単射の場合です。\(X\)の要素が\(Y\)の全ての要素と重複せずに対応しています。

例1

\(f:\mathbb{Z}\rightarrow\mathbb{Z}\)を\(\ f(x)=x+1\)で定義した場合

※\(\mathbb{Z}\)は整数全体の集合です。

・全射:〇
全ての\(f(x) \in \mathbb{Z}\)に対して\(f(x)=x+1\)が成り立つ\(x \in \mathbb{Z}\)が存在します。

・単射:〇
\(f(x_1)=f(x_2)= \in \mathbb{Z}\)のときは必ず\(x_1=x_2 \in \mathbb{Z}\)です。

・全単射:〇

例2

\(f:\mathbb{N}\rightarrow\mathbb{N}\)を\(f(x)=x+1\)で定義した場合

※\(\mathbb{N}\)は自然数全体の集合です。

全射:×
たとえば、\(f(x)=1\)とすると\(f(x)=x+1\)が成り立つ\(x \in \mathbb{N}\)が存在しません。

・単射:〇
\(f(x_1)=f(x_2) \in \mathbb{N}\)が成り立つ\(x_1,x_2 \in \mathbb{N}\)が存在する場合、必ず\(x_1=x_2\)です。

・全単射:×

例3

\(f:\mathbb{N}\rightarrow\mathbb{N}\)を\(f(x)=2x\)で定義した場合

・全射:×
たとえば、\(f(x)=1\)とすると\(f(x)=2x\)が成り立つ\(x \in \mathbb{N}\)が存在しません。

・単射:〇
\(f(x_1)=f(x_2) \in \mathbb{N}\)が成り立つ\(x_1,x_2 \in \mathbb{N}\)が存在する場合、必ず\(x_1=x_2\)です。

・全単射:×

例4

\(f:\mathbb{R}\rightarrow\mathbb{R}\)を\(f(x)=2x\)で定義した場合

・全射:〇
前項と\(f\)の定義は同じですが、この場合は全ての\(f(x) \in \mathbb{R}\)に対し\(f(x)=2x\)が成り立つ\(x\in \mathbb{R}\)が存在します。

・単射:〇
\(f(x_1)=f(x_2) \in \mathbb{R}\)のとき必ず\(x_1=x_2 \in \mathbb{R}\)です。

・全単射:〇

例5

\(f:\mathbb{R}\rightarrow\mathbb{R}\)を\(\ f(x)=x^2\)で定義した場合

・全射:×
たとえば、\(f(x)=-1\)とすると\(\ f(x)=x^2\)が成り立つ\(x \in \mathbb{R}\)が存在しません。

・単射:×

たとえば、\(f(x_1)=f(x_2)=1\)のとき、\(\ x_1=-1,\ x_2=1\)のいずれも\(f(x)=x^2\)が成り立ちます。

・全単射:×

例6

\(f:\mathbb{R}\backslash\{-1\}\rightarrow\mathbb{R}\backslash\{1\}\)を\(\ f(x)=\frac{x}{x+1}\)で定義した場合

※\(\mathbb{R}\backslash\{-1\}\)は\(-1\)を除く実数全体の集合です。

・全射:〇

\(x=\frac{f(x)}{1-f(x)}\)より、
全ての\(f(x) \in \mathbb{R}\backslash\{1\}\)に対し\(f(x)=\frac{x}{x+1}\)が成り立つ\(x \in \mathbb{R}\backslash\{-1\}\)が存在します。

・単射:〇
\(x_1 = \frac{f(x_1)}{1-f(x_1)},\ x_2=\frac{f(x_2)}{1-f(x_2)}\)より、
\(f(x_1)=f(x_2) \in \mathbb{R}\backslash\{1\}\)のとき、必ず\(x_1=x_2 \in \mathbb{R}\backslash\{-1\}\)です。

・全単射:〇

例7

\(f:\mathbb{N}\times\mathbb{N}\rightarrow\mathbb{Z}\)を\(\ f(x,y)=x-y\)で定義した場合

※\(\times\)は直積を示します。

・全射:〇
全ての\(f(x,y)\in \mathbb{Z}\)に対し\(x-y \in \mathbb{Z}\)が成り立つ\((x,y) \in \mathbb{N}^2\)が存在します。

・単射:×
たとえば、\(f(x_1,y_1)=f(x_2,y_2)=1\)のとき、\((x_1,y_1)=(2,1),\ (x_2,y_2)=(3,2)\)のいずれも\(\ f(x,y)=x-y\)が成り立ちます。

・全単射:×