ドップラー効果がどのような現象かは多くの人が理解していると思います。しかしなぜそうなるかは簡単そうで簡単ではないものです。じっくりと考えてみましょう。
(1)波源が移動する場合、音の伝わる速度はどう変わるか
まず、波源が移動した場合の音の伝播速度を理解しましょう。
例えば時速20kmで移動している人と静止している人が時速50kmでボールを投げたとします。
静止している人からは、移動している人が投げたボールは時速70kmで飛ぶように見えます。
音の伝播のしかたは異なります。波源が静止していても移動していても速度は同じです。
(2)なぜ波源が移動すると観測者の周波数が変わる?
下図は上から順に波源が近づく場合、波源が静止している場合(比較のため)、波源が遠ざかる場合です。
青の丸は波源、緑は観測者、赤は波が観測者に到達してからの振幅です。
右のグラフは観測者に到達してからの時間(横軸)、振幅(縦軸)です。
波源も観測者も静止している場合は両者の周波数は同じです。波源が観測者に近づく場合は観測者側の周波数は速く、観測者から遠ざかる場合は遅くなります。
なぜそうなるのでしょう。
周波数をf、波長をλ、速度をvとすると以下の関係にあります。
しかし波源が動く場合はこの式が成り立ちません。これを確認するために、次のように、粒度を下げてみましょう。
ピンク色の点は波源の振動の様子を示しています。ここから波が発生します。黒い点は波の一部です。
この条件で波源の近くを拡大しさらに遅くしてみます。
下図は波源が移動しない場合です。
次の図は波源が移動した場合です。
波の速度は変わりません。しかし波源が移動すると波と波源の位置関係は変わります。波源の進行方向の波は、波源との距離を詰められていきます。
波源が観測者に近づくと波長は短くなります。波長が短くなると観測者における周波数は高くなります。
(3)なぜ観測者が移動すると観測者の周波数が変わる?
観測者が移動する場合も同様です。ただし波長は一定です。観測者が距離を縮めたり伸ばしたりすることにより観測者が受ける周波数を変えているという点が異なります。
(4)波源が移動する場合の観測者の周波数の求め方
図の上側のように波源が移動する場合の、観測者が受信する周波数を求めてみましょう。
波の速度をv、波源の周波数をf、波源の移動速度をvs、その場合の観測者の周波数をf’、両者が静止している場合の波の波長をλ、波源が移動している場合の波の波長をλ’とします。
波源が静止している場合、時間t後に観測者に音が届くとします。波源と観測者の間の距離はvtです。波源が動く場合、その間にvst動きます。その時点で波源と観測者の距離はvt-vstになります。
この瞬間、移動する波源と観測者の間に波はどれだけあるでしょう。波源の周波数はfです。単位時間当たりf回振動します。時間tの間にft回振動しています。まだ観測者には届いていません。つまり両者の間にft個の波があります。
また、観測者に届く波の速度v、周波数f’、波長λ’から以下の関係が成り立ちます。
これらよりλ’を消去してf’の式にすると以下になります。
(5)観測者が移動する場合の観測者の周波数の求め方
観測者が移動する場合は考え方が少し異なります。
観測者の移動速度(離れる場合を正)をvotとすると、観測者に届く波の速度はv-voになります。
波長は静止している場合と変わらずλなので、
また、観測者が静止している場合は以下の関係になります。
これらよりλを消去し、f’の式にすると以下になります。