線形代数 – 行列式の交代性、同じ行がある場合

投稿者: | 2023年10月26日

定理1

行列\(A\)の\(2\)行を入れ替えた行列を\(A’\)とすると、

$$\mathrm{det} (A’)=-\mathrm{det} (A)$$

列についても同様。

証明1

第\(i\)行と第\(j\)行を入れ替える基本行列を\(E\)とする。

\(E\)は単位行列より第\(i\)行と第\(j\)行を入れ替えただけの奇置換なので、

$$\mathrm {det} (E)=-1$$

\(A\)の行を入れ替えた後の行列式は、

$$\mathrm{det} (A’)=\mathrm{det} (E A)$$

基本行列と任意の正則行列の積の行列式は両者の行列式の積と等しいので、

$$\mathrm{det} (A’)=\mathrm{det} (E) \mathrm{det} (A)$$

したがって、

$$\mathrm{det} (A’)=-\mathrm{det} (A)$$

が成立する。

補足

\(E\)は以下のような行列です。

\(E\)を転置し右から掛けることにより列についても同様のことがいえます。

証明2

数学的帰納法により証明する。

\(2\times 2\)の行列の場合、\(A’\)を\(A\)の第\(1\)行と第\(2\)行を入れ替えた行列とすると、

\begin{align}
\mathrm A &= a_{11} a_{22} – a_{12} a_{21}\\
\mathrm A’ &= a_{21} a_{12} – a_{22} a_{11}\\
&= -a_{11}a_{22} + a_{12} a_{21}
\end{align}

より、

$$\mathrm {det}\mathrm (A) = – \mathrm {det} (A’)$$

次に\(n\times n\)の行列について比較する。

\(A\)の\(2\)行を入れ替えた行列を\(A’\)、\(A\)より第\(i\)行と第\(j\)列を除いた小行列を\(A_{ij}\)とする。入れ替えを行った行以外より\(i\)を選び、第\(i\)行に沿って余因子展開をすると、

\begin{align}
\mathrm{det}(A)&=(-1)^{i+1}a_{i1}\mathrm{det}(A_{i1})+(-1)^{i+2}a_{i2}\mathrm{det}(A_{i2})+\cdots\\&+ (-1)^{i+n}a_{in}\mathrm{det}(A_{in})\\
\mathrm{det}(A’)&=(-1)^{i+1}a_{i1}\mathrm{det}(A^{\prime}_{i1})+(-1)^{i+2}a_{i2}\mathrm{det}(A^{\prime}_{i2})+\cdots\\ &+(-1)^{i+n} a_{in}\mathrm{det}(A^{\prime}_{in})
\end{align}

両式が等しいというためには、\(j=1,2,\cdots,n\)に対し、

$$\mathrm{det}(A’_{ij})=-\mathrm{det}(A_{ij})$$

がいえればよい。既に\(2 \times 2\)の行列において\(2\)行を入れ替えると行列式の符号が反転することがわかっている。これらは\(n=3\)における\(\mathrm{det}(A’_{ij})\)や\(\mathrm{det}(A_{ij})\)である。したがって数学的帰納法により以下が成立するといえる。

$$\mathrm {det}\mathrm (A) = – \mathrm {det} (A’)$$

補足

\(3 \times 3\)の行列について考えます。\(A’\)を\(A\)の第\(2\)行と第\(3\)行を入れ替えた行列とします。

第\(1\)行に沿って余因子展開をします。

証明の冒頭で\(2 \times 2\)の行列において列を入れ替えると符号が反転することを確認しました。したがって上の式は、

と変えることができます。これを\(\mathrm {det}A\)の式と比較し\(3 \times 3\)の行列については、

$$\mathrm {det}(A) = – \mathrm {det} (A’)$$

であることがわかります。

\(A\)と\(A’\)が\(4 \times 4\)の行列とすると\(A_{ij}\)と\(A’_{ij}\)は\(3 \times 3\)の行列なので上記の関係を利用でき、同様の結果が得られます。このようにして、いずれの\(n\)についても成立することが確認できます。

列を入れ替えた場合も、いずれかの列に沿って余因子展開をすることにより同様のことがいえます。

定理2

行列\(A\)の\(2\)行が同じである場合、

$$\mathrm{det} (A)=0$$

列についても同様。

証明

\(A\)の\(2\)行を入れ替えた行列を\(A’\)とすると、

$$\mathrm{det}(A’)=-\mathrm{det}(A)$$

入れ替えた行が同一であるとすると、

$$A’=A$$

したがって、

$$\mathrm{det}(A)=0$$