月は地球に向かって落ち続けている、といわれることがあります。確かに月は地球の重力によって引かれています。
にもかかわらず地球と衝突しないのは、地球の重心に対して月が垂直に移動しているからです。重力によって月が地球に近づく距離と、垂直の移動によって離れる距離が等しいために月と地球の距離は一定を保ちます。
人工衛星も同様のことがいえます。この様子をシミュレーションで確認しましょう。
「始」のボタンを押すと青い丸(地球)とオレンジ色の丸(人工衛星)が表示されます。人工衛星が軌道に乗る場合だけではなく、地球の表面に衝突する場合も確認するため、人工衛星は地球の表面より離れた(高い)ところから開始します。周回軌道に乗った場合は2周して終了します。
開始直後、人工衛星は水平方向に移動します。この、開始直後の速度を6通りに変えて実施します。開始後に人工衛星が自ら方向を変えようとはしません。
1回目から6回目まで少しずつ、それぞれの開始直後の速度を大きくしています。3回目は人工衛星が等速円運動をするような条件です。つまり引力(向心力)と遠心力が等しくなるような速度です。
1回目と2回目はこれより速度が小さいため、地球の表面に向かい、衝突します。4回目と5回目は速度がこれより大きいため地球には衝突せず楕円の軌道を描きます。6回目はさらに速度が大きいため地球から離れ、永遠に戻ってきません。
このように、人工衛星は条件によって3種類(以下)の運動をします。
・地球の表面に衝突する
・円または楕円の軌道を描く
・地球から離れ戻ってこない
地球と人工衛星の質量が変わらない場合、速度によって運動の違いが生じます。この、人工衛星が出発する時点の境界の速度は「宇宙速度」と呼ばれます。宇宙速度は第一から第三までの定義があります。
第一宇宙速度:円を描く速度です。つまりこれ以上であれば地表に落下することはありません。
第二宇宙速度:地球の重力を振り切って脱出する速度です。
第三宇宙速度:同様に太陽の重力圏外に脱出する速度です。
これらの定義はこのページで行ったシミュレーションとは条件が異なるところがあります。シミュレーションでは人工衛星を地表から離れている(ある高さにある)として開始しましたが、宇宙速度の定義は海抜0mから出発した場合です。つまり第一宇宙速度の場合、人工衛星は地球の表面から離れることもなく、重力によって表面に接することもなく地球の表面を周回します。
また、宇宙速度の定義でもシミュレーションにおいても、人工衛星を上空に向かって打ち上げているわけではありません。水平に出発した場合の条件です。