ギャンブルに必勝法はあるでしょうか。あると思いたいところですが、もし必勝法があって、それが参加者全員が知っていたらどうでしょう。あるいは胴元は賭けに応じるでしょうか。
実力に左右されるギャンブルなら存在しますね。ポーカーはプロフェッショナルの人が存在しますが、私が戦っても勝てるとは到底思えません。
ではコイントスや丁半賭博はどうでしょう。これは私にも勝機がありそうです。しかし本当に運だけでしょうか。賭け方によっては確実に利益を得られるということはないでしょうか。
そう思わせるのがマーチン・ゲール法です。倍プッシュや倍々プッシュという言葉のほうがよく知られているかもしれません。
拙著では期待値を算出しました。がっかりな結果でしたが、シミュレーションをしてみたら違う結果にならないでしょうか。
(1)問題
硬貨を投げ、表か裏かを当てます。賭ける金額は自分で決めることができます。当たれば賭けた金額と同じ分を受け取り、外れると賭けたお金を失います。表・裏が出る確率はどちらも1/2です。何回でも賭けることができます。
(2)賭け方
ある回にはずれた場合、次の回は倍の金額を賭け、当たった場合はそこでやめることにすれば必ず儲かるのではないでしょうか。
たとえば、初回1円賭けるとします。1回目で勝てば1円、2回目で勝てば2-1=1円、3回目で勝てば4-2-1=1円と、何回目で勝っても1円の儲けがあるはずです。
(3)シミュレーション
勝った場合は賭ける金額を1円に戻し賭けで得た、あるいは失った分は累積していくとします。
初期状態は動いていません。ゆっくりと実行する場合は「再実行(遅)」、速く実行する場合は「再実行(速)」のボタンをクリック/タップ(以下クリック)してください。連続実行します。クリックしながら動作を確認する場合は「ステップ」を連打してください。
図の横軸は賭けた回数、縦軸は所持金です。その下に表示している〇と×は各回の勝敗を示しています。
資金(開始時の所持金)は指定がない場合は100円としています。つまり初回の賭ける金額の100倍です。テキストボックスにより1-3000円の値を設定できます。
所持金が0を下回った時点で表示を赤に切り替えています。本来はその直前で賭けは続行できませんが、シミュレーションでは継続しています。
画面の「勝」は賭けに勝った回数、「全」は賭けた回数、「額」はその時点の所持金、「初」は賭けを始める前の所持金(資金)です。
ところどころ下がっていますが、継続して右肩上がりになっています。これはマーチン・ゲール法の狙い通り、勝って1円を獲得し、それが累積されるからです。
(4)やはり必勝法なのか
引き換えとなる不利益はないのでしょうか。
何回か実行すると、途中からグラフや文字が赤になる場合がありますね。これは開始前の所持金(以下資金)が不足した時点以降です。現実であればこの時点(の1回前の賭け)で続行不可になります。
しかし、それは現実の問題であって、資金が無限にあれば理論上は無限に儲けが増えるのではないでしょうか。
そうはいきません。仮に無限に資金があったとしましょう。しかし、無限に賭けることができたとしたら、今度は無限に損をする可能性があります。負けが重なれば賭け金が大きくなるからです。その確率は限りなく0に近いのですが、0ではありません。
拙著では期待値は0であることを示しました。これは無限であったとしても成立するのです。
(5)試行を続けたらどうなるか
シミュレーションに戻ります。実は何回か実行すると手持ちの金が底をつくことなく終了することがあります。しかし、これは画面と実行時間の都合で途中で止めているだけです。
ではこのまま続けたらどうなるでしょう。
下の図は賭けを延々と続けた場合の結果です。リアルタイムでの実行が難しかったので、私の環境で実施した結果の図を掲載します。
横軸は資金です。賭けを始めてから勝つまでの一連の操作を1回の試行とします。
縦軸は所持金が底をつくまでの試行回数を示しています。広範囲であるため、縦軸は対数にしています。
結果がばらついていますが、ある資金において1回限り記録しているからです。平均を記録しているわけではありません。次に同じ条件で実行したとしても同じにはならないはずです(全体として右肩上がりの傾向は同じはずですが)。
この結果をどう思われるでしょう。高々1000円の資金で約20億円まで増えているところがありますね。夢のような話です。
しかし、縦軸の数字は(利益としてみた場合)一時的なものでしかありません。これらは全て最終的に底をついています。
(6)結局、必勝法なのか
マーチン・ゲール法は手堅く稼ぐことができる方法にみえます。しかし、そうみえているだけです。忘れがちなのが「資金の限界」です。一見些細な制約に見えますが、決してなくなることはありません。そしてある時、一気に顕在化します。
結局のところ、マーチン・ゲール法は不労所得を得るものではありません。ただし賭けの一つの手法ではあります。大儲けしたいわけではないが、なるべく高い確率で勝ちたい。まれに大敗するが、それでもいい、という場合には適した手法かもしれません。