なぜ北半球中緯度の海流は時計回り?

投稿者: | 2020年5月24日

下の図は世界の海の表層の海流です。何か気がつくことはないでしょうか。北半球では時計回り、南半球では反時計回りですね。ただし、これは中緯度に限った話です。

なぜでしょう。海水が貿易風と偏西風によって流されるからです。北半球の場合、貿易風は東から西、偏西風は西から東に向かって吹きます。非常に簡単です。

しかし実際にはもう少し複雑です。コリオリの力がはたらくからです。コリオリの力は既に大気循環に作用し貿易風や偏西風となっているのではないでしょうか。確かにそうなのですが、これとは別にコリオリの力は海流にも作用しているのです。

(1)エクマン輸送

下の図はエクマン輸送の様子を図にしたものです。直感に反し理解しづらいかもしれませんが、簡単に説明します。全体として風によってどのような力が発生するかだけわかればよいと思います。

海の表面は風の影響を受けますがコリオリの力によって風に対し右向きに流れようとします。その角度は45°です。しかし深さによってその向きは変わります。

表層より少し下では表層の流れの影響を受けるのですが、さらにコリオリの力によって表層の向きより右にずれるのです。さらに下では少しずつ右にずれていきます。

このようにして、表面から下へ進むと、時計の針が動くように右へと向きを変えます。

垂直方向の力を全て合計すると、風に対して90°になります。これがエクマン輸送です。

(2)風の向きに対し海水はどう流れるか

では海水は風の向きに対して90°の方向へ流れようとするのでしょうか。そうでもありません。コップに水を入れ電車に乗っているところを想像してください。

加速時、減速時、水面は傾きますね。これは加速(減速)による力と、傾いた水面を水平に戻そうとする力がつり合っていると考えることができます。

海上に風が吹くと同じことが起きます。下の図の場合、手前から奥に向かって風が吹いています。コリオリの力が右方向にはたらきます。このコリオリの力によって水面が傾きます。傾きを戻そうとする力(圧力傾度力)が反対向きに生じます。両者がつり合うところで平衡状態になります。

コリオリの力は圧力傾度力とつり合います。したがって海水はコリオリの力の影響を直接受けることなく、風の吹く方向に向かって流れます。これを地衡流とよびます。

冒頭の「海流は貿易風と偏西風によって循環する」という結論は間違いではありませんでした。ただしコリオリの力が作用していないわけではなく、コリオリの力によって流れが左右に曲がるわけでもありません。風の向きに従って流れます。

偏西風、貿易風によって海水は流され、大陸にぶつかると離岸する流れを補うよう南または北へ流れます。

(3)補足

興味深いのは、コリオリの力によって水面の高さは変わるのでしょうか。その通りで、実際、還流の内側は少しだけ高くなっています。ただし西岸強化という現象により、西側に偏って盛り上がっています。

南半球高緯度の海は「叫ぶ40度」「荒れる50度」「絶叫する60度」とよばれます。 それぞれの緯度における緯度が荒れている様子をこう表現しています。 冒頭の図を確認してください。北半球は陸地があり風の流れが遮られるのですが、南半球のこれらの緯度は流れを遮るものがなく、勢いが衰えないからです。海流は偏西風の流れに沿って流れていることがわかります。