線形代数 – 逆行列と余因子行列

投稿者: | 2023年12月11日

定理

正則行列\(A\)の逆行列は以下のように表される。

$$A^{-1}=\frac{1}{\mathrm{det} (A)}\tilde{A}$$

証明

\(\tilde{A}A =B=(b_{ij})\)とする。

\(i=j\)の場合、

\begin{align}
b_{ij}&=\sum_{k=1}^n \tilde{a}_{ki} a_{ki} \\
&=\mathrm{det}(A)
\end{align}

\(i \neq j\)の場合、

$$b_{ij} =\sum_{k=1}^n \tilde{a}_{ki} a_{kj} $$

\(A\)の第\(j\)行を第\(i\)行で置き換えた行列を\(A’=a^{\prime}_{ij}\)とすると、

$$b_{ij}=\mathrm{det}(A’)$$

\(A’\)の第\(i\)行と第\(j\)行が同一であることより、

$$b_{ij}=0$$

以上より、

$$B=\tilde{A}A = \mathrm{det}(A) I$$

$$A^{-1}=\frac{1}{\mathrm{det}(A)}\tilde{A}$$

補足

\(\tilde{A}\)は余因子行列、\(\tilde{a}_{kj}\)は余因子です。

\(A\)を\(4 \times 4\)の行列とします。

下の図は\(\tilde{A} A\)です。

\(\tilde{A} A\)の行と列が同じ場合として、どちらも\(1\)であるときについて考えます。緑と青の部分の積和が\((1,1)\)成分になります。

$$\tilde{a}_{11}a_{11}+\tilde{a}_{21}a_{21}+\tilde{a}_{31}a_{31}+\tilde{a}_{41}a_{41}$$

これはまさに\(A\)の第\(1\)列に沿って余因子展開した式です。したがって\(\tilde{A} A\)の\((1,1)\)成分は\(\mathrm{det}(A)\)です。

他の対角成分も同様です。

次に、行と列の位置が異なる場合として\((1,2)\)成分について考えます。

$$\tilde{a}_{11}a_{12}+\tilde{a}_{21}a_{22}+\tilde{a}_{31}a_{32}+\tilde{a}_{41}a_{42}$$

これは\(A\)の余因子展開ではありません。

小行列式で表すと、

となるので、

を余因子展開したと考えることができます。

しかし同じ列が存在する行列の行列式は\(0\)です。つまり\(\tilde{A} A\)の対角成分以外は全て\(0\)です。

以上より、

となります。

以下は\(3 \times 3\)行列の逆行列を求める例です。行列式はサラスの公式を用いています。

次は\(4 \times 4\)の例です。行列式は「余因子展開」のページの通りです。