太陽は自転していますが、位置を変えずに静止しているのでしょうか。
太陽と惑星との関係について考えてみましょう。惑星が太陽の周りを公転するのは惑星が太陽の重力によって引っ張られるからです。もしこの力がなければ惑星は太陽系から離れます。惑星が円を描くのは太陽の重力があるからです。
惑星に太陽からの重力がはたらいているとき、太陽にも同じ大きさの力がはたらいています。したがって、太陽は静止しているわけではなく、動いているのです。では太陽はどのように動くのでしょう。
その前に、太陽系全体として動くかどうか考えてみましょう。太陽系が外から力を加えられているわけではありません。つまり太陽系は動いていません。太陽系が動かないということは、太陽系の重心が動かないということです。このような複数の物体の重心を共通重心とよびます。
共通重心が動かないにもかかわらず太陽も惑星も動くのは、共通重心が動かないように太陽と惑星が相反する動きをするからです。
この動きには質量も関係します。質量の大きい太陽は共通重心の近く、質量の小さい惑星は共通重心より遠い位置に存在します。共通重心からみると、各天体の移動する角速度は同じです。
簡略化し、天体が2個だけの場合を考えてみましょう。下はそのシミュレーションです。ボタンの「1:1」、「4:1」、「10:1」は天体の質量の比を示しています。
※ シミュレーションは一定時間で止まります。
質量が等しければ同じ半径の円を描きます。質量に差があればそれに応じて半径は変わります。
縮尺は実際の太陽・惑星とは大きく異なりますが、太陽だけに注目した場合、「10:1」を表示させたときと似たような動きをします。つまり共通重心は太陽の外にあり、太陽が共通重心を中心として円を描くような動きをします。
最も重い木星と比べても太陽は1000倍も重いので、もっと太陽単体の重心と共通重心が近くにあるように思えますが、太陽と木星の距離は約7.78 × 108kmもあります。太陽の半径の約1100倍です。そのために直感に反し共通重心は太陽の重心より離れ、太陽は大きく動くのです。
さて、次の「始」のボタンを押してみてください。これは太陽・惑星・衛星を模倣しています。周回軌道をする惑星の軌跡がいびつにみえると思います。太陽と惑星が共通重心を中心として円運動をするのと同様に惑星と衛星も共通重心の周りを運動しています。ただし惑星自体が公転をしているのでその軌跡に影響があります。この様子をシミュレートしています。
※ シミュレーションの都合により、太陽の質量は有限ではあるものの、位置を変えないように設定しています。
※ シミュレーションは一定の時間で止まります。
地球と月の場合、1年の間に月は約13回公転します。シミュレーションでは1回転当たりの蛇行は10回弱ですが、実際に地球が太陽の周りを1周する間の軌跡には約13回の凹凸があります。
このシミュレーションは地球の軌道を極端に蛇行させています。地球と月の共通重心は地球単体の重心より約4,600km離れたところにあります。太陽と地球の距離は約1億5千万kmもあるので、もし太陽系から少し離れたところから太陽と地球を眺めることができたとしてもこのような蛇行がわかるほどではありません。
ただし、地球の半径が約6,400kmであることを考えれば4,600kmというのは意外に大きい数字ではないでしょうか。
※ ここでは物体に外部から力を加えられて加速度が生じることを「動く」と表現しています。観測対象の物体と観測者が異なる速度で等速直線運動をしていた場合、外部からの力がないにもかかわらず観測者からは物体が等速直線運動をしているようにみえます。このような、力が加わらずに相対位置が変わる状態のことではありません。