地球の自転により我々は約1,500km/hの速度で移動しています。なぜそのことを感じないかというと、地球上の全ての静止している物体は一斉に同じ速度で動いているからです。
しかし広い範囲・長い時間でとらえると、地球上の物体は全て同じ速度・方向で移動しているわけではありません。物体の運動が短い距離・時間で終わる場合は無視できるものですが、長くなる場合は運動に影響を与えます。
まっすぐ進もうとする物体(気体・液体を含む)を、北半球では右、南半球では左に曲げようとする見かけ上の力が生じます。これをコリオリの力とよびます。
(1)地球の自転の影響を考慮しない場合
まず、2人の観測者AとBが同じ方向に等速度直線運動をする場合、物体がどう見えるかを2通りに分けて考えてみましょう。
(a)AとBが同じ速度で運動する場合
下の図の黒丸は観測者、赤丸はボールです。観測者AとBは同じ速度で運動しています。AはBに向けてボールを投げました。
二つの図がありますが、左は静止している別の観測者から見た様子、右はBから見た様子です。静止している観測者にはボールは斜めに動いているように見えますが、Bには真っすぐボールが届いているように見えます。
(b)物体が観測者より遅く運動する場合
下の図はAのほうがBより遅く運動する場合です。Bから見るとAは進行方向とは逆に移動しているように見えます。ボールも進行方向とは逆の位置にずれて届きます。
(2)地球の自転の影響を考慮する場合
前項では地球の自転を考慮せずにボールがどう見えるかを考えました。では地球の自転の影響を考慮するとどうなるでしょう。
地球が自転しているところを想像してください。
北極・南極は動きません。最も速く動くのは赤道です。つまり緯度により移動速度が異なります。これがコリオリの力の原因の一つです。
また、北極・南極上空から見ると我々は円を描いています。直線ではありません。この影響も受けます。
(a)南に向けてボールを投げた場合
投げる者をA、受ける者をBとします。AとBは、地球から見ると静止しています。地球の外から見ると自転に合わせて移動しています。
図は北極上空から見た様子です。左は観測者が回転せずに見た場合です。右は地球の自転に合わせて回転しながら見た場合です。
AはBに向けてボールを投げています。しかし低緯度にいるBはAより速く移動します。したがって、Bの付近に届くころには西にずれた位置に届きます。
(b)東に向けてボールを投げた場合
次はAが東に向けてボールを投げた場合です。両者のいる場所の緯度は同じです。向きは異なりますが移動する速度の大きさは同じです。
しかし、北極上空から見るとAとBは等速円運動をしています。ボールは等速直線運動をします。この差により到着位置がずれます。
(3)まとめと補足
・地球の自転の影響がない場合、AとBが同じ速度で移動しながらAがBに向かってボールを投げると、ボールはまっすぐに進みBへ届きます。
・地球の自転の影響がある場合、AがBに向かってボールを投げると、ボールは曲がりBには届きません。この見かけ上の力がコリオリの力です。
・地球の自転のために、直進するはずの物体が緯度・経度により速度の大きさ、向きが変わるためにコリオリの力が発生します。
・ここでは説明しませんでしたが、ボールを北へ投げた場合、西に投げた場合も同様で、やはり向きがずれます。南東であっても北西であっても同じようにずれます。
・ずれは北半球の場合、必ず進行方向に対し右です。コリオリの力は進行方向に対し右に向いています。南半球の場合は進行方向に対し左です。
・コリオリの力の影響を受ける例として、高気圧・低気圧・台風が渦状になる現象、海流が北半球では時計回りになる現象、フーコーの振り子などがあります。
・冒頭でも述べましたが、我々の普段の生活では物体の移動距離が短いか、移動時間が短いものばかりでコリオリの力の影響を実感することはできません。ボールを投げたぐらいでも無視できるほどです。アロルディス・チャップマンが遠投しても同じです。しかし、大砲を打つ場合は考慮が必要なのでご注意ください。